fc2ブログ
ちょっとした疑問のつもりだった 5
2012 / 07 / 23 ( Mon )




ため息をつきながら駅へ向かう。







何も考えていなかった。

心の中は諦めが占めていたけれど、

それでも、やっぱり自分から連絡しようと言う気は起きなかった。







もしこのまま連絡がなかったら。

明日は週末。二人でレイトショーを見に行こうと話していた日だった。

ああ、ヒカルは、あの映画見れないのかな。

でも気になっていたし、一人でも見に行こうかな…







そんなことをどうでもいいことを考えながら、駅へ向かった。







ホームに立ったところで、バッグの中に目をやり、一瞬息を呑む。

無造作に放り込んだ携帯に、着信があった履歴を示すランプが明滅していた。







彼からの着信が入っていた。

ほんの5分ほど前のこと。







すぐに折り返していた。

考える暇もなく、単純反応だった。







「もしもし」







少し疲れたような彼の声が聞こえる。

ヒカルは言葉を発することが出来なかった。







「昨日は言い過ぎた。…ごめん。

それだけ、言いたくて」







しばしの無言のあと、彼はためらいがちにそう言った。







そう言われると、思わずヒカルも私もごめん、と返していた。

そして彼は、翌日のレイトショーの約束のことを少し口にした。

それで、二人の日常はまた始まることになったのだ。









スポンサーサイト



12 : 00 | 彼とのこと | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
| ホーム |